Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

永訣

今朝、日本にいる私の大切な友人Tさんが亡くなりました。

友人Tさんとトレドに行った時に。

友人Tさんとトレドに行った時に。

彼女が癌と分かったのが8月末。
そこから9月に手術をし、その後色々な治療をしながらの日々が続いていました。
彼女に会いに行きたいと思ったものの、家族や友人が病気になる度に帰国することもできず、もう少し様子を見てから…と思っているうちに年末に。
その頃、ちょうど上司から日本出張の話が出てきました。
最初は行こうかどうか迷いましたが、夫が2月なら子供の面倒を見られること、Tさんにも会いに行けるかもしれないことを考え、行く事を決断しました。

Tさんには、お見舞いにいけるかどうかのメールを送ったものの、返事が来なかったので、「きっとメールの返事を書くのも大変なのね。もうちょっと待ってみよう。」と思っていました。
今朝、仕事中にメールでTさんのご家族から訃報が伝えられ、頭の中が真っ白になってしまいました。

正直、未だに心の整理はできていません。
大切な友達を失くし、自分がすぐその場に行かれないことがもどかしくてたまりません。

トレドの教会で。ペリカンは自分の肉を子供に与えることもある為、自己犠牲と愛の象徴として、初期の一部のキリスト教建造物に使われています。

トレドの教会で。ペリカンは自分の肉を子供に与えることもある為、自己犠牲と愛の象徴として、初期の一部のキリスト教建造物に使われています。

スペインで生活し、一生涯の友人と呼べるような人との出会いを経験し、スペインに来てスペイン語が話せるようになって良かった、という気持ちは確かにあります。
反面、こうして自分の国を離れて生活をしていると、日本の家族や友人と過ごす時間は減ってしまう為、もどかしく感じることもあります。
行こうと思ったら行けないことはないのですが、仕事の調整や子供の世話、家庭の仕事等を考えると、なかなか「思い立ったが吉日」とはいきません。
海外で生活する人の多くが、このジレンマを抱えているのではないでしょうか。

Tさんは、2012年にスペインに来てくれました。
2012年の2月位に電話でお話をした際、「どうせだったら是非スペインに!」と言った所、「そうねぇ、4月末位にお休みが取れるかも。」と言い、そこからチケットを手配して我が家に来てくれました。
あれよあれよという間に我が家に宿泊し、皆で楽しいひと時を過ごし、トレドに観光に行ったのが昨日のことのようです。

私達は、日々の生活で忙しくなり、時には他の人に割く時間が少なくなりがちです。
また、「今は疲れているから」「遠くて面倒だから」「隙間時間を利用して●●をしたいから」と言った理由で、人と会うことを減らしがちです。
(少なくとも、私はその傾向があります。)

今回の友人の死をきっかけに、改めて、人生はいつどこで終わるかわからないこと、人生において一番大切なのは、周りに喜びを与え愛情を注ぐことである点を実感しました。

私は、自分が大切に思う人達に喜びを与えているだろうか。その瞬間瞬間を精一杯生きているだろうか。
Tさんから結婚祝にいただいたグラスを手にとって、彼女との色々な思い出を反芻しました。

宮沢賢治の「永訣の朝」という詩が、ふっと思い出されました。

Tさん、どうぞ安らかに。

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4 Comments

  1. Harukiさん

    大切なご友人が亡くなられたのですね。
    お悔やみ申し上げます。
    私も最近祖父が亡くなり、身近な親類の死に初めて接することになったのですが、
    死を通じて大切なことを教わったような気がしています。
    Harukiさんにこんな風に思ってもらえるTさんはきっと、周囲を大切にする人で、自身も幸せだったでしょう。
    異国にいると自分が出来ないことばかりに目が行ってしまったり、もどかしいことが多いと想像しますが、
    Harukiさんがスペインで毎日を一生懸命に生きていらっしゃる姿は、身近な人を初め、
    私のようにブログを見に来る多くの人を励ましていると思います。
    TさんもHarukiさんのことを思う度に、元気づけられていたことでしょう。
    大変なことも前向きに乗り越えていらっしゃるように見えるHarukiさんを見習い、私も頑張りたいです。

    • > nanacolocaさん

      コメントをありがとうございます。

      お祖父様がお亡くなりになったとのこと、ご愁傷様です。
      別れは寂しいものですが、nanacolocaさんもおっしゃる通り、私達自身、身近な人の病気や死によって大切なことを教わるのでしょうね。
      色々な人の死を通じ、私も今生かされている事のありがたさを感じるようになりました。

      実は、出張を終えて帰ってきたばかりですが、今回出張中にTさんのご家族にもお会いすることができ、Tさんが大切にしていたものをいただくことになりました。
      以前、「故人が私達の思い出の中に生きている限り、その人は存在し続ける」という話を聞きましたが、まさにそのような気持ちを抱いた日本滞在となりました。

      nanacolocaさんのコメントで、私も力をいただきました。
      皆さんからこう言ったフィードバックをいただくと、それだけでHPを継続してきて良かったと思えます。
      本当にありがとうございます。

      • Harukiさん

        こちらこそ、いつも有益な情報や心温まるお話を読ませて頂き有難うございます。

        Tさんのご家族にお会いすることが出来て、本当に良かったですね。
        「故人が私達の思い出の中に生きている限り、その人は存在し続ける」という一文を読んで、私も共感しました。
        最近、「故人の生き方や言葉を折に触れて思い出す」という供養の仕方もあることを禅関係の本で知り、励まされています。

        その通りですね。
        なぜ自分が生きていて、あの人は亡くなったのだろうと思うと悲しい気持ちになるのと同時に、
        生かされている有難さを感じますね。