Buitrago del Lozoya 1
ブイトラゴ・デル・ロソヤ(Buitrago del Lozoya)という村は、私が前からずっと行きたいと思っていた場所の一つ。ついに先週この村を訪ねることができました!実は、2000人程しか住民のいないこの小さな村に、何とピカソが友人に贈った作品の小さなコレクションがあるのです。私は別にピカソの大ファンというわけではありませんが、たまたまピカソと彼の友人エウヘニオ・アリアス(Eugenio Arias)の友情について語られた記事を読み、二人の写真を眼にし、深く感動してしまったんです。
二人はスペイン内戦時にフランスに逃れ、そこで知り合います。エウヘニオはその後床屋として働き、ピカソは彼の常連客に。髪を切りながら、世間話をしたり、芸術や人生について話したりして、二人は友情を深めました。離れて暮らすようになってからも二人の友情は続き、ピカソは折に触れてはエウヘニオに自分の作品を贈ります。いつも「私の友 エウヘニオへ」と書いて。
ピカソの死後、エウヘニオはこれらの作品をマドリッド県に寄贈。85年にこれらのコレクションを飾るため、彼の出身地であるBuitrago del Lozoyaに美術館が建てられます。これは、マドリッド県が建てた最初の美術館ということですから、そのコレクションの重要性を誰もが認識していたということでしょう。
Buitrago del Lozoyaはマドリッド市の北のバスターミナルからバスで1時間半程。なかなか遠かったですが、途中では広々とした牧草地帯や岩山が見え、景色も楽しむことができました。
美術館は小ぢんまりとしていましたが、誰もいなかったのでゆっくり見ることができました。
エウヘニオが澄んでいたバヤウリス(Vallauris)のための作品 “Toros en Vallauris”ポップな感じがして、新たなピカソの一面を垣間見ることができました。また、水墨画のようなものもあり、その一つ “Toritos Fritos (雄牛の揚げ物??)”は牛が沢山のお皿に乗っていて、その発想が面白かったです。
また、ピカソが66歳から始めたという陶芸の作品もなかなか。凹凸で表現されたヤギはとても愛嬌がありました。
天井の梁にあったエウヘニオの言葉「ピカソが私に感謝の印として贈ってくれた作品のそれぞれが、人生、感情、友情の一瞬を表している(“Cada obra de arte con la que Picasso me ha agraciado representa un momento de vida, de emoción, de amistad.”)」が何とも印象的でした。二人が相手をどれだけ大切にしたかが、こういった言葉や作品の数々から伝わるようで、私も見ていて温かい気持ちになりました。
全部ゆっくり見ても1時間もあれば十分だと思いますが、一度は見る価値があると思います。何と言っても、ピカソの美術作品の価値だけではなく、彼の人間性に触れられるような気がして、巨匠の人間的な部分を多く知ることができたように思います。
さて、この村はピカソ美術館以外にも素敵なものがたくさんあったのですが・・・それは次回の日記に回します。