Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

マドリッド飛行機事故

事故後の対応にあたる救急隊員

事故後の対応にあたる救急隊員

知っている人もいると思いますが、8月20日、マドリッド発カナリア諸島行きのSpanair 5022便がエンジントラブルを起こし、離陸直後に爆発しました。153人が亡くなり、6人が病院に運ばれたということです。心配して私に連絡をくださった方々、ありがとうございました。マドリッドのバラハス(Barajas)空港は私がいつも使う空港で、カナリア諸島はスペイン人が休暇に良く行くリゾート地。私の知り合いでは、空港にいて実際に爆発して煙が出ているのを見たと言う人もいます。「自分がいつ事故にあうか分からない」という恐怖感は今のところないですが、本当に他人事ではないと思っています。
 
邦人旅行者は乗っていませんでしたし、日本では恐らく事故情報が流れる程度で、それ以上のことは聞かないと思います。ですが、こちらでは新聞で色々なことが報道されていて、改めて遺族の悲しみを感じずにはいられません。

 すでに航空会社や新聞社のHP等で乗客名簿が公開されており、生き残った人達の名前も印がついています。そのため、遺族はすぐに自分の家族が亡くなっていることは分かるのです。が、遺体のうちすぐに判別できるものは現在50体ほどしかなく、遺族は遺体判別の為だけにホテルで待機し、自分たちがよばれるのを待ち続けている状態です。泣いている遺族、家族の遺体と対面することになって気絶する遺族の写真等を毎日目にする度に、ものすごいストレスだろうなぁ・・・と本当に気の毒に感じます。

遺族の悲しみは深く・・・

遺族の悲しみは深く・・・

今回は、他にも救出時に「私はいいから娘を助けて。」と救急隊員に言い、その隊員が娘を救助している間に息絶えた母親の話も聞きました。現在その娘は回復に向かっていますが、未だに「映画はもう終わったの?」と聞いているそうです。唯一の肉親を亡くしたという人の話、娘が最後に送ってくれたメッセージを見せる母親の話もありました。当たり前のことですが、亡くなった一人一人に家族や友人がいて、それぞれの人に人生のドラマがあるわけで・・・そんなことを考えると、ただ事故としては流せないものを感じます。

今回ニュースを読んでいて印象に残ったのが、王家の迅速な行動でした。事故の次の日には皇太子夫妻が早速病院に行って事故にあった人や家族を励まし、国王夫妻は空港の方に出向いて関係者と話をしていました。皇太子が、事故にあって助かった5歳位の男の子に「キミはすごくしっかりと行動したね。ヒーローだよ。」と褒めて男の子が嬉しそうにしているのが印象的でした。日本でも首相はすぐに行動すると思いますが、皇族が事故直後の現場に行くのって、普通周りの人達が認めてくれないのでは?日本の皇族の方が良い悪いというわけではないですが、自由度の違いみたいなものを感じました。

事故に遭った人たちを見舞いに向かう皇太子夫妻

あとは、首相が急遽対策に追われるというのは当たり前ですが、スペインではライバル政党の党首も休暇を急遽返上でマドリッドに戻ってきていたのもびっくり。もちろん「与党ー野党」という構図はあるんですが、与党でなければ傍観者という風にならないのが、個人的には気に入りました。

今回の事故の対応では、マドリッド以外の県も迅速に対応してくれました。遺体の収容・判別、遺族のケア等多くの仕事がある中、他の県が医療スタッフをその日中に派遣し始めました。自分から志願して空港での医療活動にあたった医師も沢山いるそうです。さらに、遺族だけではなく、遺族の対応や遺体の運搬にあたる空港関係者も精神的にまいってしまうことがあるらしく、さっそく精神科医が現場に向かったのも印象的でした。すでに、精神的ダメージを軽減し現場を客観的に捉えられるよう、精神科医の指導の下で毎日ミーティングも開かれているそうです。

スペイン人と言うと、仕事をのんびりやっていて手を抜いている人達も多いのは事実です。でも、自分の仕事にプライドを持って働くのと、自分の時間を削ってまで仕事をするのとは違うことなんですね。こっちに来て改めて実感しました。そして、こういう事故の時には一致団結する情の深さ、強さがあります。困った人を見たらすぐに助けようとする態度、知らない人とでもすぐに打ち解けて話すフレンドリーさなど、色々な要素が相まって今回の迅速な対応に結びついたんだと思います。

この事故が早く解決しますように・・・

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12 Comments

  1. オリンピック真っ只中ということで、
    NHKですらなかなか取り上げてくれませんでしたが、
    なんとかBSの海外ニュースで
    TVEやらBBCやらを見ていました。
    国王および皇太子夫妻のフットワークの軽さには驚き。
    君はヒーローだよ、のところはちょうど見ました。
    日本だとこんなことないよなぁ、と思わず思ってしまったよ。
    あくまで政治的な対応しかなされないでしょう。
    ほんとスペインっていうと、対応は遅いようなイメージがあったけど、
    今回はそれがちょっと変わりました。
    それにしても、半数程度が降ろしてほしいと言っていたのに
    フライトしてしまったのはどうなんだろうね。
    原油高等でこの業界はかなり厳しいけど、
    これを機に安全対策を徹底してもらいたいです。

  2. スペインのロイヤルファミリーの迅速な対応は素晴らしいね。
    日本のニュースでは邦人が乗っていないとわかった時点で報道されなくなってしまいました。
    日本人が乗ってなけりゃいい、と言わんばかりの姿勢がちょっと悲しい。

  3. ヨッシー
    TVEまで見て情報をキャッチしているとは、流石です☆
    >ほんとスペインっていうと、対応は遅いようなイメージがあったけど、
    >今回はそれがちょっと変わりました。
    2004年3月にあった列車爆破テロの時は、直後からタクシーが無料でけが人を乗せたり遺族を病院まで連れて行ったりで大活躍だったらしいよ。
    しかも、会社からの連絡が届く前に各人で行動を取り始めたとか。
    いざという時には自分の判断基準で迅速に行動できるのがこっちの人の良い所かなー、と思います
    >それにしても、半数程度が降ろしてほしいと言っていたのに
    >フライトしてしまったのはどうなんだろうね。
    そうなの。そして、機長も引き返したかったらしいことがわかっているよ。
    ただ、こっちの人って時間がかかるとすぐに「引き返せー!」って言い始めるから、それもどこまで危険度を感じていたかは難しいところなんだけどね。。。
    いずれにしても、早くこの問題が解決してくれればと思うよ。

  4. あーや
    日本のロイヤルファミリーだと、いろんな許可に時間がかかるんでしょうかね。本当に準備万端整ってからじゃなければ行けない感じがします。
    個人的には、雅子さんは、ヨーロッパのどこかのロイヤルファミリーに嫁いでいたらもう少し元気だったと思います。。。
    >日本人が乗ってなけりゃいい、と言わんばかりの姿勢がちょっと悲しい。
    邦人が乗っていないのを知らせてもいいですけど、日本にだって色んな国の人がいるわけですから、どんな国の人が乗っていたかも言うべきだと思います。
    日本の報道内容を見ていると、料理番組やドキュメンタリー以外では「日本人が関わっていなければ興味なし」という姿勢がすごーく強くでている気がしますね。
    なので、日本からはBBC、ABC、TVEみたいなニュース番組は生まれない気がします

  5. この事故は本当に人事じゃないよね。
    山崎豊子の沈まぬ太陽で、御巣鷹山の事件の
    詳細が書かれているんだけど,あれを読んでいると本当に
    犠牲者一人ひとりの人間ドラマを感じました。
    自分も今度その空港を使うだろうと思うので、本当に神様にお祈りしていきます。

  6. 飛行機事故って、コワイですね!
    この事故で息子さんを亡くされたお母様の映像をテレビで見ました。
    人の泣き顔を見るのは、とても辛いです。
    御巣鷹山の事故に近所の方が巻き込まれたので、ホントに驚きました。
    しかも乗った人、乗らなかった人が知人だったので、ドラマのようでした。テレビでご家族を見るのが、辛かったです!
    NYの911事件の時も、在住のアメリカ人の友人が巻き込まれかけたのです。出張のために次の便を飛行場で待っている時に知ったそうです。彼のアパートの隣人の会社が一瞬で無くなったとか。。。。
    とにかく航空機事故は取り返しがつかないので、「価格戦争」よりも「安全戦争」の競争をしてほしいです!

  7. Hoffnungさん
    スペインでのあの規模の飛行機事故は23年ぶりだったし、これからはさらに安全に力をいれるから大丈夫だよ。
    では、来るのを待ってるよ〜

  8. プリンさん
    本当にそうですよね。
    列車や自動車事故ももちろん怖いんですが、空って言うと「逃げ場」がない感じがしますよね。
    まだこっちでは遺体の判別作業に時間がかかっていると聞いています。
    御巣鷹山の事故の時は、DNA鑑定がない上に真夏の体育館での作業だったと聞きますから、その仕事は今よりはるかに大変だったと思います。
    それでも、現在でも難航する仕事なんですね。。。本当に犠牲者のご冥福をお祈りします。
    >NYの911事件の時も、在住のアメリカ人の友人が巻き込まれかけたのです。
    私も実は、その1ヶ月弱前までNYでインターンをしていて、その関係でWTCビルの間にあるマリオットホテルに泊まっていたんです。
    あのビルの崩壊と一緒に崩れてしまいました。。。本当に何が起こるか分かりませんよね
    「価格戦争」より「安全戦争」、こういう時にこそきちんと見直すべき課題ですね!

  9. ひぇ〜〜〜!!!
    Harukiさんが、無事でいてくださって良かったです!!!!!
    本当に!!!!

  10. プリンさん
    そういっていただけると嬉しいです(笑)
    本当に、人生って「小説よりも奇なり」ですよね

  11. この報道を聞いた時には本当に震撼させられました.
    スターアライアンスメンバー機でこのような事故が起こるなんて.
    これから暫く飛行機に乗る度に若干緊張するやろうなぁ.
    犠牲者の方のご冥福を祈ってやみません.
    それにしても「自分の仕事にプライドを持って働くのと、
    自分の時間を削ってまで仕事をするのとは違う」という下りは
    非常に考えさせられました.

  12. Yukioさん
    Yukioさんも海外によくお仕事で行かれるので、こういう事故の話は他人事ではないと思います。。。でも、このニュースに負けず、来たい時にいつでもスペインに来て下さいね
    >それにしても「自分の仕事にプライドを持って働くのと、
    >自分の時間を削ってまで仕事をするのとは違う」という下りは
    >非常に考えさせられました.
    私も前は「スペイン人は日本人程しっかり仕事をしない
    」という面ばかり見ていたんですが、それは日本で育った&情報が偏っていた私の見方だったと気付かされました。
    日本人のように時間を費やして仕事に打ち込むことも一つの努力ですが、自分のための時間を確保して、勤務時間内になんとしてでも仕事を終わらせようとするのも一つの努力なんですよね。
    周りが忙しかろうと「私は集中して何倍も速く仕事を終えて早目に帰る」と言えるには、やはりそれ相当の集中力が必要で、周りに合わせないという所では意志の強さも必要になって・・・。
    それが全ての職業に浸透しているわけではありませんが、そういう姿勢を持った人が多い背景には、仕事の後に家族や友人との時間を過ごす人が多いというのがあるんでしょうね