Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

中国人?

キリスト教では、イースター前の金曜日はお肉を食べることができません。そこでよく登場するのがこのヒヨコ豆と青菜のお料理。イースター休暇になると食べたくなる一品です。

キリスト教では、イースター前の金曜日はお肉を食べることができません。そこでよく登場するのがこのヒヨコ豆と青菜のお料理。イースター休暇になると食べたくなる一品です。

4月に家の近くのアクセサリーショップに立ち寄った時のことです。お店の外にある呼び鈴を押した所、店主らしき女性が出て来て、「ここでは受け付けません。」と言ってドアを閉めようとしました。そこで、「でも、どうして入れないんですか?」と聞いてみると、「もうお店を閉めるから入れないのよ。」と憮然とした態度で言われ、ドアを閉められてしまいました。お店の午前の営業時間は2時までなのに、1時45分にそう言われ、どうも納得がいきませんでした。
(注:スペインでは、お昼が午後2時位なので、「午前」の営業時間は2時まで、「午後」の営業時間は5時〜8時といった形態が一般的なのです。)

その後、そんなことなどすっかり忘れてそのお店を通り過ぎたある日の夕方。素敵な木綿のスカーフを発見。ちょうど娘のベビーカーの色と似ていたので、「これは日よけにぴったり!」と思い、再度入店しました。

店内で、前にあった女性の店長に「このスカーフはいくらですか?」と聞いてみた所、「ここでは受け付けません。」とまた言われ、相手にしてもらえませんでした。しかし、店内には3−4人の女性が買い物をしていて、さらに1人の女性はレジでお金を払っているではありませんか。

ここに来て、これはおかしいと思い、「すみません。どうして私にだけそういうことを言うんですか?どうして他のお客さんには言わないんですか?理由を話して下さい。」と言った所、最初はまったく相手にしてくれなかったのですが、私が周りに聞こえるように「こういう不公平な態度を取るのなら、理由を言うまで私は店を出ません!」と言うと、ついに嫌々ながら話し始めました。その理由とは・・・「中国人は店の商品をコピーするために来て、買い物はしないから。」というもの・・・。思わず絶句です。

以下、ちょっと会話を載せます。

店主:あなた達中国人は、何も買わないでしょ。中国人のせいでどれだけこっちが損害を被っているか知ってる?
私:私は中国人ではありません。日本人です。しかも、商品の値段を聞いたんです。買うつもりがある人に、どうしてそういうことが言えるんですか?
店主:こっちは日本人と中国人の区別はつかないのよ。でも、わかるでしょ。中国人はお店の商品の写真を撮ったりさえするのよ。
私:お店の写真を撮るのはおかしいと思いますけど、だからと言ってアジア人全員をお店から閉め出すのは差別です。
店主:それなら謝るけれど、それだけ中国人がひどいことをしている、ってことを分かってちょうだい。
私:そのツケを私が払うつもりは全くありません。

お肉が食べられないとは言え、こんな立派なお魚を食べられて、「禁欲」とは言えない聖金曜日でした。

お肉が食べられないとは言え、こんな立派なお魚を食べられて、「禁欲」とは言えない聖金曜日でした。

こんな感じで最初のバトルは終了。不満だったものの、こっちも言いたい事をしっかり言ったので、スペインでの新たな出来事程度に思っていました。

が、夫と義理の両親はそうは思ってくれなかったようで、「それは差別だ。市の行政に訴える問題だ。」となりました。

スペインでは、法律により、各店舗には市で登録された「苦情書(Hoja de reclamación)」という書類を備えておく義務があります。何か問題があった時に、そのお店で苦情書をもらい、それに苦情の内容を記入し、3枚綴りの1枚をお店に、1枚を個人用、そして最後の1枚を市役所に持っていき、行政に解決してもらうというシステムが存在します。この苦情書をもらいに、後日このお店に義母と一緒に入店しました。

義母:この前この子(私)に対して差別的な発言をしたのはあなたですか?苦情書をいただきに来ました。
店主:でも、もう彼女には謝罪をしたし、中国人が私たちのビジネスを困難にしているというのは分かってもらえています?仕方のない措置だったんですよ。
義母:言い訳は聞きたくありません。苦情書をもらったら帰りますので、今すぐ渡して下さい。
店主:でも、彼女は納得して帰ったんですよ。それを、どうして今になって蒸し返すんですか?
私:納得してませんよ。いつ納得したって言いました?
店主:人間は間違いを犯すものですし、こうやって謝罪をしても受け入れてもらえず、こうして何度も苦情書を請求してくるなんて。良心が痛みませんか?あなたも私も間違うことはあるんですよ。
義母:苦情書をもらってからどうするか考えます。まずは書類を下さい。
店主:私のお店には、日本人のお客さんだってくるんですよ。差別をした訳ではありません。
私:それでは、私がどうして中国人に見えたんですか?
義母:そもそも、あなたはスペイン人ではなくて移民でしょ?苦労もしてきただろうあなたが、どうして同じ外国人にこういう態度を取れるんですか?

こんなやり取りを30分以上した後、渋々と店主は書類を渡してくれました。

そして、今日は義父と一緒に記入済みの書類を持ってお店に。すると、今度は「こんな前のことを蒸し返して。私はサインはしませんよ。私には、自分の店に入る人を選ぶ権利があるんだから、何も悪いことをした覚えはありません。」「そんな書類を読むつもりはありません。」と開き直るではないですか。さらに、私が「それなら、この前の謝罪は何も意味がないものだったんですね。」と言うと、「あなたは黙っていなさい。あなたとは話したくないのよ。」と言い始めました。

私の義父は、普段はとても優しい人ですが、こういう不正には容赦しない人なので・・・最終手段を講じました。「それでは、あなたのサインがないと書類を役所で受け付けてもらえないので、警察を呼びます。」と言って、呼んでしまいました・・・。

10分後に警察が来て、私達と店主が状況を説明すると、警官は店主に「それでは書類にサインをしてもらいましょう。」と言ったため、店主は怒り心頭。抵抗を試みましたが、警官は「さらに言えば、消化器の注意が書いてある所に消化器がありません。こういう安全維持を図っていないお店は、今後の検査でひっかかりますよ。」と、逆に注意を強化し始めました。

1時間半の攻防戦の末、何とか店主のサインとコメントの入った書類を手にし、私は警官にお礼を言って自宅に帰りました。義父は、警官2人に「本当にありがとうございました。でも、自分の国でこういうことがあるのは本当に残念です。人間の尊厳に関わる部分で、外国人が他の外国人にこういう態度を取るのは本当に醜いことです。お時間を取らせてしまい、申しわけないです。」と言った所、「そういう問題を解決する為に私たちがいるんですから、当然のことです。どちらが正しいかは、あなた達の態度を見てすぐに分かりますよ。」と言われました。感謝です。

スペインに来てからよく中国人に間違えられることはありましたが、今回の件ではまさに差別を受け、改めて、外国に住むといろいろあるものだと感じました。ですが、スペインに来て間もない頃に似たような事をされて深く傷ついたことを思い出すと、今はだいぶ自分を守る術を心得るようになったなぁ・・・と、ちょっと感慨深くもありました。

海外に住むということは、良くも悪くも色々な新しい経験を積み重ねることです。様々な経験を経て、少しずつではありますが、嬉しい事があれば素直に感情を表し、不満があればその場で解決し、後に持ち越さない・・・そういう習慣ができあがってきているように感じます。「強くなる」というのには、本当に色々な要素が含まれるものですね。

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8 Comments

  1. はじめまして、というかお久しぶりですというか。。。
    以前、今は日本に帰任してしまったかおりさんと一緒にレティーロ公園近くのシードレリアでお会いした事があります。少し前に、偶然このブログを発見しまして、たまに読ませていただいていました。
    出産されたんですね、おめでとうございます。私も、8月に出産予定です。この記事を読みましたが、こんなにはっきりと差別をされたのでは頭にきてしまいますね。その後の対応、ブラボーです。
    こういう理不尽な対応は毅然とした、態度で向かいたいですよね。

    • あ、どなたか分かりました!
      プールに関係しています?(^^)
      nenaさんも8月に出産予定なんですね。おめでとうございます!
      マドリッドの夏と妊娠後期が重なるとちょっと大変かも知れませんが、くれぐれも体調には気をつけて下さいね! 
      何か知りたいこと等あれば、いつでもご連絡下さいね。

      ここまで理不尽な扱いはなかなかないですが、やっぱりそこで抵抗したのは、スペイン生活が長くなってきたからかも知れません。
      親切な人には感謝をし、差別をする人に対しては徹底抗戦・・・逞しくなりますよね(笑)

  2. スペインにはこんな制度があるんだね!
    日本はうやむやで、行政は決して弱い者の味方ではなく、かつ、法整備もきちんとなされていないよね。
    アファーマティブアクションの一環としての政策はあるけど、どちらかというと、既得権益みたいになっていて、悪くすると差別等を助長しかねない状況だもんね。

    海外は楽しい反面こういうことは必ずあるから、なかなか嫌だなぁ、と私は引きこもりになりました。

    あと、何よりもはるちょが義理の家族に大切にされていてうれしい。

    • 日本でうやむやなのは、きっと差別と分かる程の差別が少ないからだと思うよ。
      お店に入ったりすると、機械的だったり無関心だったりする店員さんも見るけれど、それでも(マニュアル通りなのか)きちんと対応してもらえる場所がほとんどです。

      そういえば、一度スペインの友人ともんじゃ焼きを食べに行った時、店員さんが明らかに嫌そうに対応していて、しかも唯一の日本人である私にだけ強気に出てきたことがあったよ。
      最初は我慢していたけれど、途中でムカムカしてきて、「お店に来た人に対して、そういう人を見下したような態度をするのってどうなんですか?」と言ったらビックリしていたよ。
      そして、その後丁寧になった(笑)
      きっとそういう反撃に慣れていなかったんだろうね。

      という訳で、私は日本もスペインも、良い部分もあれば良くない部分もあると思うよ。

      >あと、何よりもはるちょが義理の家族に大切にされていてうれしい。

      ありがとう。すっかり家族の一員です(^^)
      でも、彼らも我が家に来て、好きなだけ孫との時間を過ごしたりするし、1−2週間我が家で一緒に過ごすのも当たり前だったりするよ。
      きっと日本人同士の家族だと、「息子の嫁の家に長い間いたら申しわけない。」とか、そういった気遣いで長期滞在したくてもしないかも知れない。
      だから、それぞれの良い所を取り入れられた気がして、個人的には幸せに感じています☆

  3. なかなか、壮絶なバトルだね。びっくりしながら読んでいました。何か自分の場合も、
    苦情書まで出さなくてもいいかなとか思いそうだけど、そういうところで徹底的に
    意見を言って問題解決しようとするのはすごいね。確かに、そういうことをしなければ、
    この店主はアジア人に対して同じ態度をとっただろうし。。。
    そもそもスペインという国で外国人が外国人を差別するって醜いなと
    思うよね。
    普通の中国人が入ってもすごいショックを受けるだろうね。

    〇〇という民族、人種は〇〇だみたいな思い込みは危険だなと改めて思ったよ。

    • うん、きっと、追い出されても言い返せなかったアジア人はいたと思うよ。残念だけど。
      スペインに住む中国人のほとんどは、スペイン語はあまり上手ではないしね。

      本当は、今回の件はそこまで恨みに思った訳でもないの。
      でも、こういった理不尽な状況が蔓延るのは良くないし、そういう時に一人一人が断固とした態度で訴えることが、最終的には皆にとって過ごしやすい環境になるんだと思う。
      とは言え、なかなかエネルギーが必要かな(笑)

  4. こんにちは。お久しぶりです。
    娘さん、元気に成長されているようで嬉しいです。

    さて…ひどい話ですね。
    主人に話したところ、スペインでそんないやな目に合って、申し訳なく思うと言っています。
    そもそも、スペイン人ならそういうことはしないだろうって。それは、スペイン人は差別をしない
    ということではなく、この苦情書の件を知っているから、そんな馬鹿なことはしないということです。
    差別はしなくても、良く思っていないスペイン人がいることも確かではないでしょうか。
    昨年末、セビージャへ旅行したときも、流行っているお店は、中国人経営のお店でした。

    確か一年前くらいに、同じようなニュースをネットで読みました。
    それは、イタリアで「中国人お断り」という張り紙をした店があって、かつて「ユダヤ人お断り」と張り紙した時代を思わせ、問題になっているというものでした。
    そこの店主いわく、何度も来て、試着して、写真を撮って、注意するとイタリア語はわからないと
    言う。その後、イタリア語を流暢に話している姿を見た。彼らは明らかに、デザインをコピーしに来ているだけ。というものでした。
    この問題、どうすべきか私にもわかりませんが、この状況を止める方法はないような気がします。

    このようなひどい差別を私は受けたことはありませんが、色々あると強くなりますよね。
    harukiさんとご家族の徹底した行動を尊敬します。

    • >MIGUさん

      MIGUさんのご主人のお気持ち、嬉しいです。
      うちの夫も、私にこういうことがあると、当の本人より怒るタイプですよ。
      スペイン人の血でしょうか(笑)

      でも、海外に住んでいると何かしら不都合なこともありますよね。
      日本にいたらいたで別の不都合なこともあったりするので、どちらが良いとは一概には言えませんが。
      そういう中でも、私のことを大切に扱ってくれる人達もいるので、今は日本もスペインも大好きですよ。

      中国人のビジネスは、正直私も解決が難しい問題だと思います。
      日本ではどうやってコントロールしているのか、ちょっと興味がありますね。