お手伝いさん
日本ではまだ一般的ではないと思いますが、スペインでは共働きの夫婦に子供が生まれると、お手伝いさんを雇って子供の世話をお願いすることがよくあります。保育園に預けるのとお手伝いさんを雇うことの違い等について、ちょっとご紹介します。
①保育園
日本と同じように、スペインの保育園にも公立と市立のものがあり、さらに一定の基準を満たして公的な補助を受けている(=私立の保育園より安め)concertadoという種類の保育園もあります。全体的に日本ほど競争率は高くないようですが、通常こちらの入園時期は9月の為、それまでは受け入れてもらえないことが多いです。スペインの育児休暇は16週間の為、この育児休暇終了時期までに9月にならない場合は、何らかの対策を考えておく必要があります。
また、現在のスペインの経済危機により雇用を創出する必要があるということで、保育士の資格がある程度緩やかになったり(=資格がなくても安い給与で働く人が増える可能性あり)、条件の軽減があったりで、保育園の環境が今後どう変わって行くのか不安視している人もいます。
私達が見てそれなりに良いと思った保育園は、8時半〜16時半までの8時間で月600ユーロ程度だったと思います。日本の相場と同じ位のようです。私の訪ねた全ての保育園では、「衛生上の問題」で母乳持ち込みは禁止されていたりしたので、日本ではどうなっているのかちょっと気になる所です。
②家族に預ける
知り合いの中には、仕事を探している妹にお金を払って娘の世話をお願いしている、という人もいます。一般的なのは両親に見てもらうというケースで、共働きの両親にとっては一番安心できる選択肢だと思います。ですが、これは日本同様色々と複雑な問題を孕んでいます。
ー祖父母はとかく子供を甘やかしがちで、両親と意見が対立したり、祖父母と両親の子育ての意見の違いで衝突したりする。
ー祖母が面倒を見て疲れてしまう。(祖父はマイペースというケースが多いです。)
ーお金を払わずに済むと考える両親と、世話をしている祖父母の間での口論頻発。
ー栄養についての知識があまりない祖父母が、体によくないものを沢山子供に与えている。(甘いもの、フライドポテト、お肉偏重等。)
やはり、親に頼るのが当たり前になるのは危険です。
③お手伝いさんを雇う
スペインには、知人のつてでお手伝いさんを雇う人が多くいます。以前友人や家族の所で働いていた人、またはその人の姉妹ということが多く、やはり安心感があるからだと言われています。その良さは以下の通り。
ー何と言っても朝の子供の状態に左右されずに仕事に出られること。(熱があったり体調が悪そうだったりすると、保育園では預かってもらえません。)
ー子供の着替えその他をお手伝いさんに任せられること。(着替えさせた途端に赤ん坊がウンチをしてしまうなんてことがしょっ中だと、保育園に連れて行くのも一苦労です。)
ー子供の成長に合わせてお手伝いさんが臨機応変に対応してくれる。(これがあるべき姿ですが、保育園では必ずしもそうではないようです。)
ー家族の一員が四六時中見るのと違い、子供もある程度従順。
ー掃除や洗濯等の家事をしてもらえる。(働く主婦には本当にありがたいです。)
逆に、問題や心配点もいくつかあります。
ー自分達がいない時に本当にきちんと働いているかどうか確認できない。(赤ん坊を置いていく時には、特に心配になるものです。)
ー自分たちが大切にしている家具や物を同じように丁寧に扱ってくれるかどうか心配。(実際、大切にしていたカップを割られたという話も・・・。)
ーデリケートな衣類を間違った方法で洗濯/アイロンして服が駄目にならないか心配。(我が家でも、子供服の染み抜きで服の色が落ちてしまったことがありました。)
ー盗難等の心配。
ーお手伝いさんの遅刻や病欠があると、親の仕事にも影響。
ーお手伝いさんが変わることになると一家の一大事。新しい人探しや引き継ぎの問題で親はてんてこ舞い。
私達の場合、どちらの両親もスペインにはいない為、②の選択肢は最初からありませんでした。
娘を保育園に預けて「娘のコミュニケーション力を高める」ということも考え、出産前からいくつか保育園も見て回ったのですが、最終的にはやめました。それは、私の職場復帰と保育園の入園時期が合わなかったこと、娘にとって家でゆっくり過ごした方が快適だと思ったこと、そして、「4ヶ月の赤ちゃん同士のコミュニケーションと言っても限界がある」と思ったからです。
また、保育園に預け、仕事の後に急いで保育園に娘を迎えに行き、さらに娘と一緒に買い物や掃除をしていたら、私自身が休む時間が取れないと思ったからでもあります。これをこなしている日本のお母さんは、本当にすごいと思います。私達の場合、お手伝いさんを雇うことでそれなりの出費はありますが、娘がお手伝いさんといる間にある程度遠出をして必要な買い物を済ませたり、夕飯の下ごしらえをしたり、座ってメールをチェックしたりできるので、帰宅後の1時間は私にとって本当に貴重な時間となっています。また、以前は夫の仕事だったお風呂ですが、今はお手伝いさんが娘をお風呂にいれてくれるので、夫も帰宅後に少しゆっくりできるようです。(ゆっくり娘の好きなDVDを一緒に観ていたりと、結局娘のペースではありますが。)
私達が最初に雇った女性はパラグアイの女性でした。彼女はかなりシンプルな考え方をする人だったので、特に深い話や知的な話をする相手ではありませんでした。ですが、子供に対しては深い愛情を示し、家事もそつなくこなす女性だった為、娘はたっぷり愛情を受けて育ちました。昨年11月、その女性が私達に仕事を変えるということを伝えてきました。法律で定められた最低期間である2週間前に連絡を受けたので合法ではありましたが、ちょうどその直後に夫が1週間の海外出張を控えており、私は仕事が忙しい時期と重なり、本当に無我夢中での人探しとなりました。知り合いをあたり、近くの教会全てを訪問して情報を集め、キリスト教の慈善施設を訪問して登録し・・・と、仕事・人探し・娘の相手で一日が終わる日々でした。幸い、今のお手伝いさんを見つけることができました。
現在我が家にいるお手伝いさんはディアナ(Diana)という名前のコロンビアの女性です。近くの教会の一つで偶然彼女の情報をもらい、連絡を取って面接、採用に至りました。最初は子供の世話をしたことがあると言っていた彼女ですが、やはりかおり程小さい赤ちゃん(当時10ヶ月)は初めてだったようで、初日はおむつを反対に付けられた娘を見て正直不安が頭をよぎりました。家事もそこまで慣れている様子ではなく、アイロンも時間がかかっていましたし、掃除の仕方にも改善すべき点がちらほら。ですが、もともとやる気があり子供が大好きな人だったので、かおりも日ごとに彼女になつき、とても良いコンビとなりました。
気がつくと、かおりは私達両親がいない時にはディアナを探すようになり、彼女がいないと「仕方なく」おじいちゃんやおばあちゃんと時間を過ごすようにまで変わりました。掃除もゆっくりながらしっかりとこなしてくれるので、我が家もそれなりにきれいな状態を維持でき、私の方で必要に応じて追加の掃除をする程度になりました。アイロンは、スペインの義母仕込みの私の目からは足りないと思う点もありましたが、それを直す為に週末に私が時間を割く余裕もなく、最終的にはそれで満足とすることに。全て完璧にしてもらうよりは、娘と彼女の結びつきを大切にする方向で物事を見るようにしました。
いつも二人が行く公園ではこのコンビはとても有名なようで、私が娘と週末に公園に行くと、色々な人から「Kaori、こんにちはー。」と声をかけられるようになりました。その人達と話をすると、ディアナがとても丁寧に娘の世話をしていること、二人が遊んでいると他の子供達も気になって近づいてくること、娘が皆におもちゃを貸していること等を教えてもらい、私達両親としても嬉しい発見でした。
ディアナはコロンビアにいる間に子供の教育にも携わっていた女性なので、娘の教育には色々と力をいれてくれました。歩きそうで歩かない娘の為に、腕の下にタオルを通して支えて一緒に歩いてくれたり、色鉛筆を買って一緒にお絵描きを楽しんだり、Milikiという子供の歌の歌手として有名なスペイン人のCDを持ってきてくれたり、近くの子供図書館に連れて行って一緒に絵本を見たりしてくれたこと等が印象的です。また、かおりの誕生日には、かわいらしいタイツやネズミの耳のヘアバンドをプレゼントしてくれました。そういう一つ一つの行動に彼女の優しさが見えて、こちらも心が温かくなりました。また、とても細やかな気配りのできる女性で、言葉遣いや仕草も優しいので、かおりも良い影響を受けたように思います。言葉遣いが悪い人やデリケートさに欠ける人には私も居心地の悪さを感じますが、それは娘も同じようで、あからさまに神経質になったり近づかなかったりするので、それはそれで面白い反応だなぁと思って見ています。
お手伝いさんを雇うということは、家に家族以外の別の人が長時間一緒にいるということです。信頼関係が生まれると、知らないうちに、彼女の人生や考え方を共有することにもなります。ディアナの場合もそれは例外ではなく、子供時代からの色々なトラウマが今でも彼女を苦しめていることを知りました。(それくらい苦しんできたからこそ、人の気持ちに敏感で優しいのかも知れませんが。)かなり問題のある家庭環境の中で自分のことより周りを守る為にずっと動いてきたこと、母を虐待する父を憎みつつも父の愛情に飢えてきたこと、母を守りながらも子供を矢面に立たせる弱い母に怒りを感じてきたこと、スペインに一人で住んで仕送りをしていても、彼女の辛さを周りは理解してくれなかったこと等。そんなこともあり、夏の休暇でディアナとかおりが義両親の元に滞在した時には、ディアナは自分の言葉を聞いてくれる人を見つけ、理想の家族の中で生活しているようで本当に嬉しく感じたそうです。また、義両親も彼女に沢山の時間を割いてくれたようで、彼女もとても元気な状態でマドリッドに戻ってきました。
そんな彼女が9月位から鬱になり始めました。以前にもそういう状態になったことがあったので、娘の存在がそれを癒してくれればと思っていましたが、次第に食欲をなくして痩せ始め、10月になってからはかなり痩せているのが分かるように。それでもいつもと変わらずしっかり働いてくれ、かおりは相変わらず「ニアナー(ディアナのこと)。」と彼女を慕っていましたが、こちらとしても長くは働けないかも知れないと思うようになりました。
11月の初め頃、彼女より「体調が悪く、お医者さんからは精神科の薬の量を増やす必要があると言われてしまいました。しかも、体重がこれ以上落ちたら強制入院とも言われてしまったので、11月いっぱいで仕事をやめて12月にコロンビアに戻ることにします。私は家族の問題でいつも拒食症になりかけてきたので、これを解決する為には家族としっかり話して私の状況を分かってもらう必要があります。」と言われました。彼女なりに非常に悩んだようですが、コロンビアで両親としっかり話さないと根本的な解決にはならないと感じたようで、敢えて今一時帰国することを選びました。こちらとしては、お手伝いさんがいなくなるのは大打撃ですが、彼女の今後のことを考えて送り出すことに。まだ時間は1ヶ月あるので、しっかり人探しをして、今度こそ引き継ぎをしっかりしようと考えていました。
・・・が、何とついにディアナの調子が悪化し、緊急入院に!少しずつ人探しをしていたものの、まだ2週間あると思って面接を始めていなかったこちらにとっては青天の霹靂です。週末に何人か面接をし、ひとまず次の日から働いてくれる人を見つけましたが、娘が新しいお手伝いさんに問題なく慣れるよう、夫か私のどちらかが家に残っている必要があります。こういう時に限って、私の部署では一人が休暇、もう一人が病院の検査・・・と、不運が続きます。とは言え、ネガティブな部分ばかり見ていても始まらないので、ひとまず新しいお手伝いさんと娘が早く慣れてくれるよう、今週はできるだけのサポートをし、仕事は残業ゼロで対応できるよう頑張るつもりです。こういう時に、娘に申し訳ないとちょっと思ってしまいますが・・・娘の普段の適応力の高さにも期待です。
どうぞこの変化が良い変化でありますように。そして、ディアナが早く元気になって、無事にコロンビアに一時帰国できますように!!
かおりちゃんがお手伝いさんに懐いていてよかったと思っていたのですが。妊娠中の体で仕事や家事、育児をこなしつつ、新たなお手伝いさん探しをするのは、本当に大変なことだと思います。2ヶ月後に産休開けの私にとって、他人事とは思えません。うちは、義父母に預けつつ、高齢で足の悪い義母の負担を考えて、お手伝いさんをパートでお願いするつもりでしたが、家に他人を入れるのは嫌だということで揉めています。
ディアナさんにはかおりちゃんもよく懐いて、Harukiさんも満足していた様子だけに、彼女の複雑な状況が好転して笑顔が戻ることを願わずにはいられません。
チェスカさん
ご連絡が遅くなり、すみません。
また近日中に日記にもアップしますが、この1ヶ月程本当にバタバタしていまして・・・(今もバタバタ中ですね・笑)
お嬢さんの成長と仕事との両立、大変なこともあるかと思いますが、どうぞチェスカさんもお体にお気をつけて、楽しい休暇をお過ごし下さい。