カディス その2
私たちのカディス滞在ですが、今回初めてAirbnbというサービスを使って個人間の滞在サービスを利用しました。滞在先は市内の中央に住んでいる家族の家の一部屋です。皆のコメントを読み、滞在先の住所や宿泊料、写真等を参考にして選びました。実際現地に何代も住んでいる人の家に滞在するのはとても良い経験で、家の中の歴史ある物まで見せてもらいました。ホストの女性ブランカ(Blanca)は細かい所にまで気を配ってくれ、観光地図や色々なお得な情報を教えてくれた上、家の鍵も貸してくれたので、滞在が本当に便利なものとなりました。
滞在先によって内容は千差万別のようですが、興味のある方は、是非お試しください。
今回滞在してみて個人的に印象に残ったものをご紹介します。
⚫︎チュロス
日本で食べるチュロスと異なり、スペインのチュロスは 甘くもなければシナモンもついていません。スペインでは一般的な朝食メニューとして登場する、星型の絞り口で絞って揚げた甘くないドーナツと思っていただければ良いと思います。これをホットチョコレートやコーヒーに浸したり、お砂糖をつけて食べたりするのが一般的です。今回カディスで食べたのは、スペインの他の地域で食べた物よりずっと細く、長さも形もバラバラで、油が少な目のチュロスでした。
アンダルシア地方の他の地域ではマドリッドと似たようなチュロスにしか出会ったことがなかったのですが、今回チュロスにも地域性があるのだと気付かされました。なかなか美味しかったです。
⚫︎物干し
マドリッドでは、普通通りから見える場所には洋服は干しません。歴史的にはそういった下町のような場所もありましたし、最近では中南米からの移民が至る所に洗濯物を干しているという(かなりネガティブな)コメントを耳にしたこともあります。が、基本的には、美観を損なうという理由で、表から見えない裏庭や中庭(Patio)、あるいは室内用物干しを使って室内で干すのが一般的です。ですが、カディスでは屋上が物干しに使われており、高い位置から風にはためく洗濯物の数々を見ることができ、思わず日本を思い出しました。さすが、光の都市です。
⚫︎魚介類
スペインは海に囲まれた国なので、基本的に魚介類が美味しい場所はたくさんあります。それでも、カディスの魚介類の美味しさには本当に感動しました。私の父方の親戚は焼津出身で、私も魚の新鮮さにはうるさい方ですが、市場で盆に盛られたアサリが間断なく潮を飛ばしているのを観賞し、つやつやした魚の光に感動し、 日本ではみたことのない魚の種類に感心し、マドリッドではなかなかお目にかかれない魚の卵に舌鼓を打つ・・・という、本当に贅沢な体験をしました。
ちなみに、私の大好きなお魚料理は”tortitas de camarones”というエビの入った生地の薄焼きと、”Cazón(カソン)”という小さなサメの切り身を揚げたものです。
⚫︎冷製スープいろいろ
日本でもよく知られるアンダルシア地方の冷製スープといえば、トマトがベースのガスパチョ(gazpacho)でしょう。でも、その他にもガスパチョよりもっとクリーミーなサルモレホ(salmorejo)、トマトではなくアーモンドを砕いて混ぜるアホブランコ(ajoblanco)等もあります。アンダルシアの至る所で楽しめる冷製スープですが、カディスのとあるレストランの一品で、サラダにサルモレホをかけたものもとても美味しかったので、備忘録まで。色合いも鮮やかで素敵です。
⚫︎イスラム文化の影響が少ない
アンダルシア地方と言うと、イスラム文化の影響が非常に大きく、イベリア半島で最後まで抵抗したムスリム教徒がグラナダにいたこともよく知られています。ところが、カディスはローマ時代後半からレコンキスタ完了まで、ほとんど歴史的な動きがありませんでした。そのような理由から、イスラム文化の象徴であるモスクやムデハル建築は見られませんでした。(時々、タイルやドアの模様にイスラム建築らしきものを見ることはありましたが、アンダルシアの他の地域に比べると非常に稀です。)
⚫︎アンダルシアの方言
アンダルシアの他の地方同様ですが、カディスもスペイン語の発音がずいぶん違い、その違いで理解しにくいこともあれば、面白くて笑ってしまうこともありました。(決して悪い意味ではなく、なんとなく愛嬌を感じてしまうという意味です。)例えば、複数形のSが抜けたり、”Z”の発音が”S”になったりします。一例を挙げるとすると、小アジの”los boquerones”であれば、”lo boquerone”となります。
ちなみに、娘も今回の滞在でアンダルシアの発音が身について(?)きたようで、義父に向かって「おじいちゃん、歯を磨いた?」と言う時に、”Abuelo, ¿te has lavado los dientes?” が“Abuelo, ¿te ha lavao lo diente?”となっていて、思わず笑ってしまいました。
⚫︎カディス発祥の言葉いろいろ
カディス発祥の熟語は結構いろいろあります。歴史もわかって結構面白かった二つをご紹介です。
“hacerse el sueco(直訳:スウェーデン人になる)”:これは、「わからないふりをする」という意味で使われます。これは、ナポレオン戦争当時、ナポレオン支配下にあるもののスペインの特産物(シェリー酒等)がほしいイギリス商船等が、船籍がスウェーデンであるかのようにスウェーデン国旗をつけていたことから由来していると言われています。
他の説もあるそうですが、交易が盛んで、なおかつナポレオンの侵略を防いだカディスだけに、真実味がありました。
もうひとつは、”Cursi”:「きざな」「ド派手な」「趣味の悪い」といった意味で使われます。これは、昔カディスにフランス人の家族”Sicur”一家がいて、そこの女性達の着飾り方が「目立ちたがり屋」で「滑稽な感じ」だったため、周りが冷やかして”Sicur”→”Cursi”と言ったのが発端だとか。あまりスペイン語っぽくない単語だと思っていましたが、こういう由来を知ると面白いですね。
⚫︎フランコの影響未だに残る?!
スペインの独裁者として知られるフランコ。彼が統治したのは1975年までなので、もう彼の死から40年も経ったことになります。それでも、彼が亡くなってから立憲君主制までの道のりは、それこそ彼を支持する人達と彼に反対する人達の間で民主主義技を作り上げる必要があった為、「抜本的な改革」というよりは、かなり緩やかな改革の部分もありました。このような事情もあり、一部の地域では、フランコの名前を冠した通りや広場、フランコが党首となった新ファランへ党(スペインのファシスト政党)の紋章等を取り除く作業は2000年代にも行われていました。
今回、偶然カディスのとある公立の学校でこのファランへ党のマーク”El Yugo y la flecha(牛の軛と矢)”を見つけてビックリ!まだこんなに堂々と残しているとは…。皆が皆昔のフランコの独裁政治に対して反対しているわけではないこと、ファランへ党の創設者プリモ・デ・リベラ(Primo de Rivera)がカディスから比較的近いヘレス・デラ・フロンテーラ(Jerez de la Frontera)出身というのも影響しているのかも知れません。それでも、スペイン人にとって独裁政権の象徴でもあったマークが未だに残っていることに驚かされました。
では、これにてカディス終了!
書きたいことはたくさんあるのに書く時間が全くない日々ですが、少しずつアップデートをしていきたいと思います。