トリーハ
キリスト教では、キリストの復活の日(復活祭:Easter:Pascua)の46日前から始まり、キリストの死から復活祭までの週(聖週間:Holy week:Semana Santa)を除いた期間を「四旬節(しじゅんせつ:Lent:Cuaresma)」と呼びますが、この四旬節及び聖週間にスペインでよく目にするお菓子がトリーハ(Torrija)です。
Torrijaとは、言って見ればフレンチトーストのようなものです。もともとヨーロッパの広い地域においてこの「フレンチトースト」は作られており、その起源は文書だけでも古代ギリシャ時代まで遡ることができます。スペインでは、初めてトリーハが文書に登場するのは15世紀と少し後になります。
各家庭や地域で作り方に違いはありますが、スペインのトリーハの作り方を簡単にご紹介します。通常はスライスしたパンを牛乳またはワイン(しろワインや甘いデザートワインが一般的)に浸して十分味を浸み込ませた後、衣として溶き卵をつけ、油で揚げます。(普通はフライパンを使用。)揚げた後に、蜂蜜、糖蜜や砂糖にシナモンが入ったものを浸み込ませて甘く仕上げて出来上がりです。
バリエーションとしては、鍋に牛乳、砂糖、シナモンをいれて温め、沸騰直前に火から降ろしてパンに回しかけ、パンが牛乳をしっかり含むまで待ったあと、小麦粉と卵で衣をつけて揚げる方法もあります。この場合、揚げた後に砂糖とシナモンをかけ、熱いうちに食べるのが普通です。
マドリッドで一般的なのは、揚げたパンにシロップ(蜂蜜、砂糖、糖蜜を同配合で混ぜて作ったもの)をかけたトリーハで、ナイフで切るとじゅっとシロップが出て来る位ひたひたにできています。これは常温でいただくことが多いですが、日本の甘さに慣れた私から見ると極端に甘く、我が家では誰も食べません。(私の義弟は、このトリーハの場合は水洗いをしてから食べます…。)
トリーハは、歴史的には貧しい人たちの食べ物でした。今はそこまで徹底的に守られてはいませんが、キリスト教では四旬節に肉を食べることが禁止されています。その為、手軽に、しかも誰でも手に入れられる食材(パン、牛乳、卵、ワイン)で十分なエネルギーを供給するという観点から、トリーハは四旬節の理想的な食べ物でした。この「高カロリーでエネルギーを供給できる」という点では、四旬節に食べるスペインのシロップひたひたのトリーハと、ラマダンで特に多く消費される木の実や蜂蜜を使ったお菓子は似ていると言う人もいます。
スペインでこのトリーハを食べることが一般的になったのは、実は20世紀になってからです。スペイン内戦(1936〜1939年)あとの食料が不足していた時代には、フランコの独裁体制も相まって、キリスト教以外のお祝いと言ったお祝いはありませんでした。そのような時代には、四旬節〜聖週間とクリスマス(スペインでは1月6日の公現祭まで)の二つが特に重要とされていました。内戦後は皆が貧しかったこともあり、このトリーハが一般的になったと言われています。
我が家では、週末の時間がある時にトリーハを作って皆でいただくことがありますが、その時には一般的なスペインのレシピとは違うやり方で作ります。このレシピは私の義父のお父さんが作っていた方法で、普通のフレンチトーストに近いやり方でしょうか。彼の作り方を義母が覚えて私たちに作ってくれたので、私たちにとっても「トリーハ」と言えばこちらの方が馴染みがあるくらいです。
一般的なトリーハと我が家のトリーはの一番大きな違いは、我が家のトリーハは外側がさくさくしていて甘さ控えめなのに対し、お店のトリーハは甘いシロップでひたひたになっていることです。義母によると、義父のお父さんはお料理が上手で、義父が貧乏学生時代に友達と一緒に家に押しかけると喜んで出迎え、トリーハやパウンドケーキをさっと作ってくれたそうです。普段手に入れられる食材で、お腹をすかせた学生たちの為にあっという間に美味しい食べ物を準備してくれたということで、当時料理がほとんどできなかった義母は感心してしまったそうです。そして、もてなすことが大好きだった彼は、いつ家に行っても喜んで迎えてくれたとか。そういう温かい思い出話を聞くと、私もトリーハを通じて義父のお父さんとつながっているような気がしてきます。
これからもこのトリーハを作り続けていきたいな…と、そういう気持ちになります。
¡Hola!
はじめまして Sra.Haruki
Madridの日常を伺うことができ 時々見させていただいています
EL Rey Leon 素晴らしいです! ぜったい観に行きたい ..!
Torrijaを作ってみました シナモンの風味が豊かで美味しかった ..
ぜひ美味しそうなお菓子をまた教えてください!
そしてスペイン語も教わりたいです ..!
Uedaさん、はじめまして。
トリーハを作ってくださったとのこと、どうもありがとうございます。
スペインは素朴なお菓子が多く、それぞれの記念日や行事のお菓子がいくつもあります。
これから少しずつご紹介できればと思います。
スペイン語は、私は日本にいる間にラジオ講座も少しかじりましたが、なかなか面白かったですよ。
ご興味があれば、ぜひどうぞ。
私が教えるよりずっとわかりやすいと思いますよ(笑)