「パンの迷宮 (El Laberinto del fauno)」
「パンの迷宮(Pan’s Labyrinth; El laberinto del Fauno)」を観ました。これはギエルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)監督の映画で、今年オスカーを3つ受賞した作品です。一見ファンタジックで子供向けの作品のようですが、、、これは決して子供向けじゃないです!!!ファンタジックなふりして結構ありますよ、残酷シーン。私はこの監督の作品って結構好きですが、観ている途中はかなり怖がっています(笑)ただ、観終わった後にやっぱりどこか強烈な印象が残って、数日間は何度も反芻していますね。
以前の日記で「悪魔の背骨(The Devil’s Backbone)」を紹介しましたが、同じ監督です。まだ彼の作品を観たことがない人には、まずは”The Devil’s Backbone”、その次にこの作品を見ることをお薦めします。
さて、ここからはネタバレなので、まだ観ていない人はここでストップ!内容がどうしても知りたい人は読んで下さい(笑)
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このストーリーはスペイン内戦後、第二次大戦終結前のスペインの様子です。軍部と反対勢力の戦い、隠れて機会を狙う反対勢力に協力しつつ軍隊側に潜む人々、捕えられた兵士の拷問等々、非常にリアルな部分があります。(拷問怖かったー!)そのリアルな世界と関連しつつも、少女の周りで繰り広げられるファンタジックな世界がとても面白く、色々なおとぎ話や冒険の物語を彷彿とさせます。が、そこはギエルモ・デル・トロの映画、残酷シーンも盛りだくさん。不気味感は超一級です。
また、その軍隊側の隊長と結婚した女性(少女の母親)の生き方には、「大人になるということはこういうこと」と、夢を否定する姿がくっきり。子供を大事にする母親でありながら、子供の夢を奪っていくような姿があり、「子供のためと思いながら、親って子供の世界を壊していくのかしら」なんて思いました。
全体としては、「大人向けファンタジーだなぁ。」という感じ。観ている間は決して楽しいものではなかったけれど、悪人には悪人として生きるしかない人生があり、子供の人生も実は複雑で、、、といった、色々なメッセージが込められているのを感じました。グロテスクな部分を詳細に映し出す監督の趣味に時々ついて行けなくなるけれど、全体としてはやっぱり良くできた映画かな、って思います。
ただ、やっぱり疑問が残るのがエンディング。少女を試したというのは分かるけれど、少女が弟の命をかばって殺されて、あの世で「良い選択をしました」というのはどうかなーと。ちょっと行き過ぎでは??神だから試練を与えても良いけれど、わざわざ死ぬ程の試練を与えてその人の人間性を見るのは、ちょっと傲慢な気がしまする。
皆さん、どうでしょうか。
平穏な日常生活では隠れていたものが、戦争やテロなど非日常が入ってくるとあぶりだされてきますね。赤裸々な「生きていかなきゃならない人間」というものの存在・・・・・。
Harukiさんが以前紹介しておられた、「ボルジア」家の人々もまた「生きていくこと」を肯定した人々でしたね。でも他人の「生命」を侵すことも肯定していましたが・・・・。
母親は「子供のため」が金科玉条ですが、いつの時代もどこの世界でも「子供の夢を壊す存在」なのかもしれませんね。Harukiさんは、子供さんといっしょに夢を見たいですか?
「神の与える試練」については、私も疑問に感じることがしばしばです。でもホスピスで知り合った或る女性(32才)は、「この病気は試練でなく、神がくださったプレゼント」と言っていつも笑顔でおられましたが・・・・。「殉教」や「弟をかばって命を無くす」ことと「病気」は、違うかもしれませんが・・・。
ギエルモ・デル・トロ監督の作品は見たことありませんが、有名な方なんですか?ペドロ・アルドモバル監督ってスペイン人でしたっけ?私はスペイン映画はほとんど見たことありませんが、この監督の作品は少し見たことあります。
絵画でも映画でも明暗がはっきりとしていて、リアルだというのが私の感想なのですが、Harukiさんはいかがですか?
タイトルを読んで「へえー,ヨーロッパには『お菓子の家』ならぬ
『パン(bread)の迷宮』があるんや〜,さすが小麦文化圏」
と思ってしまいました.
キョウヨウレベルが低くてほんますみません.
この間日記に書かれていた、”The Devil’s Backbone”の映画、映画館で観ようと思っていたですが、まだ上映期間だったはずなのに何故か上映は終わってしまった後のようでした。なので、Harukiさんのお薦め順でぜひぜひ観ようと思います。でも、The Devil’s…がお家でしか観れないのが残念です(>_<)
>ウェイシーさん
そうですね。ある意味「ボルジア家」に通じるものがありますよね。
もっとも、ボルジアの方は権力争いと、その中で信頼が失われて行く様が描かれていたのに対して、今回の映画は「軍部と反体制派の戦い」という白黒つける戦いという感が強かったですね。
>Harukiさんは、子供さんといっしょに夢を見たいですか?
うーん、難しい質問ですね。私としては、子供には夢を与え続けたいと思います。
人生の複雑さに耐えるには、やはり小さい頃からの家庭で愛されてきた記憶が大事だと思うんですよね。
私自身、昔小学校の先生に「大人っていうのは皆汚いものなんだよ」と言われて大人がイヤになった時期がありましたし。
そういうのは、他の人に言われないで自分で学び取るのが一番かな、と感じます。
アルモドバルもスペインの監督ですよ!スペインのフランコ独裁体制が終わってから、いきなり民主主義と言う名の下に極端な文化解放が始まった時期に彼も有名になりました。
ですので、彼の作品には修道女の同性愛者、父親の子を身ごもってしまった女性等、およそ普通の生活では考えられないような登場人物が沢山出ます。
でも、とても素敵な作品もたくさんあるので、良かったらご覧になって下さいね。ちなみに、アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルスは彼の作品で有名になりましたよ。
絵画については、私も賛成です。エル・グレコの聖家族の絵等は、やはり本物を見ると神々しく感じますよ。
ただ、エル・グレコはお金を沢山払ってくれるなら誰にでも絵を描いたらしく、意外と批判されてもいたようですね。
>Yukioさん
もしかしたら日本でのタイトル、間違ってるかもしれません!!
パンはギリシャ神話の牧羊神から来ているんだと思いますよ。
確かに、神様の顔が不気味な羊でした。
是非観て下さいなー!
>マスミちゃん
個人的には映画館で観るより恐怖を感じないですむから良いかもしれないよー。私は映画館で観て、その直後はぶるぶるしてました(^^;)
でも、その後心にズシリと何かを感じるのはギエルモ・デル・トロ監督ならではだよ。感想教えてね!
すごいな。はるきの感想。勉強になります。
私もスペイン映画じゃないけどラテンアメリカの映画はよく見ていました。でも本当に残酷なメッセージ、残酷な結末になる映画が多いよね。怖いって言う感覚わかるな。強烈に何日間かのこっちゃったりするんだよね。ハリウッドとも日本映画とも違うのよね。なんでなんだろう!?
いやいや、くうちゃんのSF生活もいつも楽しみにしてるよー。
ラテンアメリカの映画、実はあまり知らなかったりするの。お薦めのものがあったら是非教えてね!
確かにハリウッドとは違うよね。でも、すごく人間臭さっていうのかな?そういうのが出ていて、本当の人と人との関係を観ている気がするよ。
でも、ハリウッドの映画も好きなのは好きだな〜(笑)