Jabón Magno (ハボン・マグノ)
私が石鹸が好きなことを知っている友人から、この前お土産に石鹸をもらいました。石鹸の名前はマグノ(Magno)。スペイン、ガリシア地方にあるポンテベドラ(Pontevedra)という市の近くにあるラ・トハ(La Toja)という島で作られています。写真で分かるとおり、この石鹸は真っ黒なのです。酸化鉄が含まれるからだそうですが、知り合いのスペイン人の何人かは、「小さい頃はこの黒が不気味だった。」と言っていました。日本には既に炭の入った黒い石鹸があるので、意外と使うことに抵抗はないのでは?これだけ真っ黒な石鹸ですが、その泡立ちの良さと泡の白さで知られているんです。(海水でも泡立てることができるとか。)
この石鹸が作られているラ・トハに石鹸のお店ができたのは1899年。この島にある温泉のミネラル成分を含んだ石鹸として売り出されました。その後、1936~1939年にスペイン内戦が勃発し、内戦中・内戦後とスペインでは深刻な食糧不足が続きました。この時代から1950年位までは化粧品の需要はそこまで高くなく、化粧品というより健康への興味が高かったそうです。このような時代に、ラ・トハはミネラル塩を含んだこの石鹸のセラピー効果を謳い、石鹸の売り上げを少しずつ伸ばしていきました。
1955年にこの黒石鹸がハボン・マグノ(Jabón Magno)という商品名で売られるように。(「ハボン」とはスペイン語で石鹸のことです。)化粧品への需要の高まりの波に乗り、このマグノ石鹸の売り上げもどんどん伸びていきました。70年代に、この石鹸を製造していた会社がヨーロッパ化粧品会社大手のSchwarkopf &Henkelの傘下に入り、デザインがモダンなものに変化、製造量も増えたそうです。
現在ではこのラ・トハという島の名前がメーカーの名前となり、石鹸の他にもクリームやシェービング・フォーム等色々なものがあります。それでも、やはりハボン・マグノが一番人気と言われるのは、この石鹸のミネラル成分の豊かさとふくよかな泡、そして昔懐かしいような心安らぐ石鹸の香りのためでしょう。私は以前にもラ・トハの製品のパッケージを見たことがありましたが、何とも言えず「古臭い」デザインと色合いだと思っていました。それも、100年以上続く伝統のある石鹸だからと知れば納得です。「古臭い」も「レトロ」に見えてくるから不思議です(笑)
スペインは元来あまりマーケティングの上手な国ではなく、スペインで人気のある素晴らしい製品が海外で知られていないということもしょっちゅうです。これから、このような「埋もれた宝」を探して少しずつご紹介して行ければ・・・と思います。