Buitrago del Lozoya 2
Buitrago del Lozoyaの第二弾です。ピカソ美術館の良さについては前回書きましたが、この村の良さはそれだけではありません。何と言っても、この村の歴史の長さ、建築物の堂々とした佇まい、美しい風景がこの村の魅力でしょう。
実は、このBuitrago del Lozoyaは19世紀のナポレオン侵略時には、村を通ったナポレオンの軍隊によって大きな打撃を受けます。また、1930年代のスペイン内戦時には、この村に前線が置かれたことから、やはり文化的価値のある建物が大きな打撃を受けました。 このような打撃を受けながらも、この土地や文化的遺産を愛する人たちがいたからでしょうか。建物は修理され、遺跡は元の形に修復され、自然の美しさがそのままに残されたこの村は、来る人を「古き良きスペイン」に誘います。
要塞の形を取るこの村の城壁は、レコンキスタの時期あるいはそれ以前に造られたもので、11-2世紀の都市の面影を今なお残しています。他のものもちょっとご紹介。
- メンドーサ家の城跡 (Castillo de los Mendoza)
14-5世紀に建てられたこのお城は、そこの有名なメンドーサ家と呼ばれる家族が強い影響力を持っていた時代に建てられました。今は廃墟のようになっていますが、イスラム建築の流れを窺わせるムデハル様式の堂々とした建物でした。ここでフアン2世(Juan II)、フェリペ3世等をもてなしたこともあるとか。中が円形になっているのが、ローマ時代のコロッセオや闘牛場を連想させます。
- 橋 「プエンテ・ビエホ(Puente Viejo)」
通常puente viejo (古い橋)と呼ばれるこの橋も14-5世紀のもの。ここからの川の流れと静かな端の佇まいはとても素敵でした。
- 教会 (Iglesia de Santa María del Castillo)
もとはモスクだった建物がレコンキスタ後に教会になったもの。ゴシック様式を基礎としており、14世紀に完成します。1936年スペイン内戦直前に大火に遭って構造部分以外が全て消失するものの、1982年に修復開始。 これも当初の様式である、ゴシック様式とムデハル様式を尊重。
中は、一時期共存したといわれるイスラム・キリスト・ユダヤ教を象徴するため、これらの宗教のモチーフが使われています。これが、今までみたことのないほど混在していて、最初はびっくり。そして徐々に感動しました。壁の部分にアラブの国々の国旗の一部(恐らくイスラム教のモチーフだと思います)が使われ、聖母マリア像の隣のロウソク台はユダヤ教のもの。
スペインの教会と言うと、「イスラム教徒のモスク→教会に」「教会→イスラム教徒のモスクに→再度教会に」といったものが多く、前の文化の影響を受けていても、意図的に他の宗教を取り入れた建物は非常に少ないです。そういった中、敢えて「他の宗教との共存」をモチーフにして修復が行われた教会というのは非常に珍しく、こういう「共存」こそが宗教の土台なんだなぁ、と感動しました。
村に行くまでに時間はかかりますが、見る価値のあるものがたくさんあります。マドリッドに行く機会があれば、一日村に立ち寄るのはいかがでしょうか。