専業主婦とは
私の母は結婚前まで英語の教師として高校で数年仕事をしていました。結婚と同時に退職した為、私が小さい頃の母は専業主婦でした。子供達が色々なことを楽しめるようにといつも時間を割いてくれる母で、美味しいごはんやお菓子を作ってくれ、一緒に遊んでくれ、寝る時にはよく私達に本の読み聞かせをしてくれました。末っ子の私が4歳位になると家で近所の子供達に英語を教え始め、時々聞こえる「ビードーシ(be動詞)や「Good bye, thank you, Mrs. Kaneko」が呪文のようだと思ったことを覚えています。(残念ながら、私は授業に参加したことはありませんでしたが。)
私が8歳になった頃、子供がもう十分大きくなったということで、母は日本語教師として外国人に日本語を教える仕事を始めました。週2−3回でしたが、朝早くから職場に通い、仕事をし、夕方には家に帰るという感じだったので、特に母の不在を感じることもありませんでした。そんな時に母が言っていたのは、「女の人も、自分の専門分野を持って、キャリアを積み重ねて行くことは大事よ。」ということでした。母が主婦で不満だったという印象は受けませんでしたが、そんな母の言葉が今でも時々思い出されます。
日本での仕事を辞めてスペインに来てから、期せずして専業主婦を経験した時期がありました。やり甲斐を感じていた日本での仕事を辞め、スペインに来て修士を終え、ようやく念願叶って就職活動を始めた時期です。やっと仕事ができると期待していたのですが、ビザが必要ないEU圏内の人達に混ざって外国人として就職活動をするのはなかなか難しく、10ヶ月程就職活動をしつつも主婦業をしていました。その時は、「主婦とは何と辛いものだろう」と感じたのを覚えています。自分のしたいことをできるという良さもあった反面、主婦というのは仕事と自分を切り離すということが不可能です。帰宅してリラックスしている夫と義弟(当時は同居していました)を尻目に食事の準備をすることに不満を感じていました。恐らく、自分がやりたいと思って選んだ選択肢ではなかった為に、周りが休んでいる時に一人で働いているのが嫌で嫌でたまらなかったのでしょう。主婦業、辛かったです!
また、義母は専業主婦ですが、それはもう完璧に主婦業をこなす人で、買い出しをほぼ毎日して手のこんだ料理を作り、食後には彼女一人が席を立って後片付けを始めて台所を完璧にキレイにし、家族全員の洋服の買い物をし・・・と、驚く程のパワーで色々なことをこなします。彼女のお陰でこの家族は居心地の良い生活を送っている訳ですが、我が家では皆が家事にもっと参加していたので、私は彼女を手伝いつつも、女性だけしか家事をせず、男性は休んでいるこの状況に違和感を感じていました。
ある日、義母と主婦について話していた時、彼女が「私は心理学を専攻して、心理カウンセラーになることも考えたけれど、自分の身近な人をまず幸せにする義務があると思って、仕事をすることを辞めて家に入ることを決意したのよ。子供はあっという間に大きくなるし、カップルとの関係も大事。今しかできないこともあるんだから、自分のことは脇においてできるだけのことを家族の為にするべきよ。」と言いました。彼女の言うことも尤もだと思いつつも、我が家は共働きです。子供の為に自分のことは脇において子供に全力投球するのは美しいですが、その間に夫がテレビを見たりゲームをしたりしているのでは、どうして私だけ働いているんだろうという気になります。また、夫との関係ももちろん大事ですが、「夫が帰ってくるまで夕飯をとるのを待つのが当たり前」という彼の家族の文化を私がそのまま受け入れるのには無理があります。私の夫は帰宅が遅くなることが多く、最近では深夜2時ー4時になることも。反面、私は朝の6時半には起きますし、今は息子の夜の授乳等もあるので、夫に合わせていたら私の体が持ちません。彼女の話をそのまま受け入れるのではなく、夫と私のリズムでどうすべきか、もう少し二人で模索してみようという結論に達しました。
その反面、「あげればあげる程、受け取るものが増える」という彼女の言葉にはある種の真実があるとも感じました。かおりが生まれて仕事を始めてからは、帰宅すると自分の時間はなかった為、仕事の後に買い物をしたり、喫茶店でちょっとお茶を飲んで一息したりということを繰り返していました。ですが、仕事が増えてそれができないと、自分の時間が全く取れないことがストレスになり、さらに週末にしなければいけない家事をこなす為に、夫に娘を公園に連れて行ってもらったり・・・ということを繰り返していました。子供との時間があまり取れていないのに、さらに「子供がいない間に○○をして・・・」と家事中心の生活をしていては、子供との交流も希薄になってしまいますよね。
健斗が生まれてから、義母のこの言葉を思い出して、意識的に子供との時間を増やすようにして、さらに「自分の時間がないのは当たり前」と言い聞かせるようにしました。「意識的に」というと大袈裟かも知れませんが、学生時代から今まで色々なことを効率化することばかり学んできた私としては、子供にとにかくできるだけ時間を割くということがどうも自然にできなかったようで、少し時間がかかりました。やらなければいけない家事があってもそれを置いて娘と公園に行ったり、自分たちの食事の準備をしていても、娘が寝る前に「ママー、ご本読んでー。」と言ったらちょっと小休止をしてみたり、娘が寝ている間におやつを手作りしてみたり。そんな些細なことですが、少しずつ意識的に子供達との交流を増やした結果、前よりも子供達との時間を楽しんでいる自分に気づきました。自分の時間はほとんど取れませんが、それでも思いっきり子供との時間を満喫し、沢山の楽しい思い出を作ったので、健斗の育児休暇の後の職場復帰も落ち着いた気持ちで受け止めることができました。
少しの間ですが専業主婦を経験してみて、これは何と重要で、そして何と大変な仕事だろうと感じました。「女性もキャリアを積み重ねて行くことは大事」という母の言葉もよく理解できます。私も、専業主婦として家事と育児のみにしか時間が割けない状況だったら、かなりのストレスになっていたかも知れないと思います。同時に、母や義母の親として全力投球する姿勢からも多くのことを学んでいます。だからこそ、母親のありがたさも分かる反面、子供を保育園に預けたり、お手伝いさんを雇ったりする人達の判断も、それ自体は何も悪くなく、むしろそれによって子供との時間を本当に充実したものにできるのならこんな良いことはないとも思います。
世の中には、仕事をして「子供との時間が取れない」と残念がる女性、仕事をする為に子供を保育園に預ける親を批判する人達、子供を自分の外出に連れ回している親、子供と一緒にいるようであまり相手にせずに自分のことをしている父親等、本当に色々なケースを目にします。本当に大事なことは、どんな選択であっても、子供に全身全霊取り組むということは親の大事な責任と理解した上で、親と子供にとって最良のケースを見つけることだと思います。
かおりと健斗は、今はお手伝いさんの女性と一日のかなりの時間を一緒に過ごしています。それによって助かる部分がある反面、彼女のやり方で気になる部分ももちろんありますし、色々意見の相違が出てくることもあります。それでも、安心して子供を家に置いておけるということは何にも増して重要ですし、だからこそ帰宅してから子供との時間を本当に大切にできるのだとも思っています。育児では色々と難しい問題も出て来ますが、まずは親である私達が子供との時間を楽しみにしているということが、子供にとって一番良い環境なのかな、と最近思います。
お久ぶりです。
第二子のご誕生おめでとうございます(遅いですが、、、)
以前バルセロナでの大学について問い合わせしたまきのです。
こちらにきて半年、この九月より娘は保育園に通い始め、私はその間
語学学校に行ってます(主人の駐在期間が思ったより短く、大学院に行く
という目標は達成できなそうですが、、、)
専業主婦に対する自分の中での葛藤が、私にもあり、今回の記事にとても共感しました。
私は妊娠を機に専業主婦になりました。数年働いてた会社から産休、育休
をもらい一年後復帰するという予定でした。自分の中では期間限定
でしたので専業主婦ってこんなんなんだとか、自分の性格上絶対に向いてないなとか、
第三者的な感覚で見てました。育休にはいり間もなく主人のバルセロナ転勤が決まり、
仕事を退職することに決めました。現職には戻れないことは明らかだったのと家族で
「バルセロナ」での生活に魅力を感じました。
今は向いてないと思ってた専業主婦ですが、考え方を変え、今この期間は私自身のスキルアップのとき、
勉強ができる時間があるのはまたとないし、子供との大切な時間も過ごせるし、多いにエンジョイしよう、と。
また私の両親は共働きで(私の母も英語の教師でした!)私は保育園育ち、小学生になると
放課後は学校内にある託児所に行くという、いわゆる鍵っ子でした。ただ両親からの愛情を足りてない
と思ったことはなく、多分それは、週末や休みになると必ず家族で出かけたり旅行したりと、
両親が私達子供達に「全身全霊」取り組んでくれたからだと思います!
長々となりましたが、、、今回の記事にとても共感し思わずコメントしたくなりました 。
失礼しました。
まきのさん
メッセージありがとうございます。
このブログは、ちょうどバルセロナに出張に行っている時に書き終えました。
偶然とは言え、まきのさんと同じ場所にいたなんてびっくりですね。
働いている女性の間では、専業主婦というものを「退屈」と考える人達もいますが、自分の家と子供を安心して預けられる専業主婦の存在って本当にありがたいと思います。
ただ、専業主婦になるという選択は本当に難しいものですよね。色々な心の葛藤があるのも当たり前だと思います。
まきのさんの場合、ご家族でのバルセロナの生活に魅力を感じたというのも理解できます。
実際バルセロナに行ってみて思うことですが、子供の為の公園や施設もいろいろありますし、何よりも、皆が子供に対してとても優しいですよね。
どうぞ、ご家族との時間を思い切りエンジョイして下さいね。
皆さんのスペインの滞在が充実したものでありますよう、お祈りしています。
「子どもがいない間に何々して」というのは、本当によくわかります!
専業主婦だった時には生産的なことを何もしていないことにストレスを感じていました。今は今で全てが中途半端なことにフラストレーションが溜まっていますが、忙しさを言い訳に、見て見ぬ振りをしています。主婦業も全力投球すれば、達成感が得られてまた違った気持ちになれるのだと思います。
ついこの間まで赤ちゃんだった娘は、先月から保育園に通うようになりました。怠け者の私は常に全力投球というわけにはいきませんが、子どもはすぐに大きくなってしまうので、自分のことは少し脇に置いて、今この時の娘との日々を楽しもうと思うようになりました。もう赤ちゃん時代には戻れないのだから。
そんなわけで最近はあまり自由時間もないのですが、今日は久しぶりにネットに繋ぎ、Harukiさんの新しい記事を読んで嬉しくなりました。
チェスカさん
いつもコメントをありがとうございます。
そして、返信が遅れてすみません。
もうご存知かと思いますが、旅行の後のリズムがまだできていなくて、この1週間は夜は本当に眠くて何もできませんでした・・・。
お子さんが随分大きくなったんですね。きっととても可愛いでしょうね。
私も身を以て実感していますが、子供の成長って本当に早いです。
どうぞ今の時間を思い切り楽しんで下さいね。
私は結婚を機に仕事を辞め、12年専業主婦をしつつ2人の子育てをしていました。
夫は朝早く出て日付けが変わるまで帰らないという日本的働き方ですし、転勤の可能性があったからです。
しかし、この春から声をかけていただいて、子供相手のパートタイムの仕事を始めることになりました。私の子供達は母親が仕事に出掛ける事自体が初体験でしたし、上手く生活が回って行くのかが心配でしたが、家族の協力のもと続けています。専業主婦の間は、幼稚園や小学校のPTAを含め様々なボランティア活動をしていましたが、もちろんそれに対価があるわけではありませんでしたので、初月給の時は「家事以外の自分の活動がお金になるなんて!」と、若かりし頃の初月給より感動しました(笑)
私の子供は男子のみですし、これからはますます共働きの世の中になるでしょうから、フルタイムでないにしろ私が働いている姿を見せられることは、彼らにとってプラスになっているとは思います。ですが…それまで続けていた読み聞かせなどのボランティアは不可能となり、何と無く学校とも距離が出来てしまい寂しさを感じています。彼らの小学校時代は一回きりだし、今の学校に関するボランティアは専業主婦なしでは回っていかないのも、これまた事実なのです。
スペインはどうか分かりませんが、日本も、ずっと働き続けながら子育てする、または子育てがひと段落したら前職に復帰できるなどの、選択肢が多い世の中になって欲しいものです。政府も色々打ち出している様ですが、まずは男性の働き方が変わらないといけないのでは?と思います。
まるこさん
コメントをありがとうございます。
12年専業主婦をされた後に仕事を始めるというのは、とても大きな決断だったと思います。
選択肢が増えているとは言え、まるこさんがおっしゃるように、「男性の働き方が変わらないと」仕事を続けるのはなかなか難しいことですよね。
私は夫のサポートを得ているとは思いますが、それでも私が主体であるのが当たり前、夫に「お願い」をしなければいけないのが当たり前ですので、意識的にサポートしてほしいことを口にしないと物事が進まないというのが現状です。
それでストレスを感じるか、自分の取り組み方を工夫していくかどうか、色々な課題もあると感じています。
専業主婦でも共働きでも、その良さと不便さ両方があると思いますが、まるこさんの決断はきっと家族が協力するための良いチャンスにもなると思いますよ。頑張って下さいね。